ふと、ある瞬間を思い出した。
それは、金が吸い取られていく光景。
僕は、その契約のデメリットを伝えた。だが、彼の開業したい気持ちはどうにも抑えようがなく、彼は不利なことを承知で判を押し、その場で札束を契約の際に手渡した。開業資金は退職金をあてた。結果、2年ほどで廃業にいたった。
案の定という言い方はしない。彼が十分に楽しめたのであれば、それはそれでかまわないと思うからだ。
さて、今回のケースは、借り手が留まった。留まらなければ、やはり金が吸い取られていったことであろう。なるほど、金は吸い取るものか。そう考えると、僕のビジネスも変わるだろう。だが、それができれば、とっくに別の商売をしている。信念を大事にしていると言えば、聞こえはいいかもしれないが、実はけっこうしんどいものだったりもする。信念で食えるわけでもないからね。けど、それでもやっぱり「信念」が試される。いや、もしかしたら、自分で自分を試しているのかもしれない。